「ねぇ三蔵?」

「何だ。」

「あたしの事好き?」

「あ?」

「だーかーらー・・・あたしの事、好き?」



・・・いきなり何を言い出すんだコイツ?



その声の主であるの方を振り向くと、眉を寄せてベッドの上で枕を抱きかかえて不安げな様子で俺を見ていた。

「・・・さぁな。」

俺は少しずれた眼鏡を直すと、再び読みかけの新聞に視線を戻した。
しかしそんな俺の態度が気に食わなかったのか、は尚も食い下がる。

「ねぇー教えてよぉ!」

「・・・ガキはとっとと寝ろ。」

ガキじゃないもん!!



そう言ってすぐふくれて怒鳴り返すヤツの何処がガキじゃねぇって?



俺は眼鏡を外して大きくため息をつくと音を立てて新聞を机に置いた。
側にあった煙草を手にとって火をつけると、そのまま煙草を口元へ運び煙を吸い込む。
その間もベッドに座っているから目を離さない。
顔を赤らめながらも俺の視線から決して目を反らそうとはしない。
一歩も引く気を見せないその目は・・・何かを挑むような力強さすら感じさせる。

そう言う目をしたヤツは・・・嫌いじゃない。










煙草の火が手元まで来た頃、俺は灰皿を引き寄せ火をもみ消した。
その頃にはも少し落ち着いたようで、先程までの張り詰めた空気は見られない。



・・・全く手のかかるヤツだ。



「・・・突然どうした。」

「・・・」

「他のヤツラに何か言われたのか?」

「・・・」

小さく首を横に振るの行動に嘘は見られない・・・一体何があった?

「聞いてやるから言ってみろ。」

「・・・ホント?」

「あぁ・・・」

「怒らない?」

「さぁな・・・」

「じゃぁ言わない。」

俺を怒らせたいのか、コイツは?
ガタンと音を立てて立ち上がると俺はが座っているベッドへと近づいた。
しかし目の前に立ってもは顔をあげない。

「・・・。」

ピクリと肩が震えたがまだ俺の方を見る気配は無い。



少しだけ声を強めると、弾かれたように俺の方を見上げたの目には何故か涙が浮かんでいて・・・少なからず驚かされた。
そっと指で涙を拭うとその場に屈み、の背中に手を回して小さな体を抱き寄せた。

「何泣いてやがる。」

沈黙の時間はそう長くは無かった。やがて俺の胸の中でポツリポツリと喋り出したの声はさっきまでとは違いやけに弱々しく、涙を堪えてる所為か言葉も途切れ途切れになっている。

「だってあたしばっか・・・
三蔵好きで、毎日好きって・・・言ってる・・・のに、三蔵は・・・何も・・・言ってくれない・・・

法衣を掴んでいるの手は微かに震えていた。

「だから・・・不安で・・・

「何を不安に思う。」

「だって・・・三蔵には・・・もっと似合う人が・・・
いっぱい・・・

の背中に回していた俺の手が僅かに震える。

「それ以上馬鹿な事言うと・・・その口塞ぐぞ。」

自分でも驚くくらい低い・・・低い声。
それはコイツを不安にさせてるという俺に対しての怒りの・・・声。

でも・・・

「もういい・・・黙れ。」

言うと同時に抱いていた腕を解いての頬を包むと、そっと唇を合わせた。
驚きで見開かれていた瞳もやがて静かに閉じられ、その瞬間零れた涙が俺の手に落ちた。

「言葉が欲しいならくれてやる、だが・・・俺はお前にそれ以上のものをやってるつもりだ。」

キスの所為で力の無くなったの体を再び抱きしめ、心の奥に刻み込むように俺は言葉を選んでに囁く。

「だがお前が必要だと言うなら・・・いくらでも言ってやる。」

空いた手での左耳にかかっている髪をかきあげると、そこへ唇を寄せて囁いた。

「俺が好きなのは・・・、てめぇだけだ。」

「さんぞ・・・」

「不安にならねぇくらい愛してやる。・・・覚悟しとけ。」

「・・・うん。」

何時の間にか俺の背にの手が回されていて、しっかり抱きしめられていた。





俺の全てでお前を愛してやる。
だから・・・つまんねぇ事で不安になるな。





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え〜っとこれはお友達のまいさんにプレゼントした品、のはず(はず言うな!)
まいさんに向けて書く三蔵は、うちの三蔵と違ってカッコイイのですよ。
おっかしいなぁ、同じ三蔵書いてるはずなのにどうして違うんだろう?(苦笑)
どうやら相手が悪いみたいです・・・うちのヒロイン、突っ込まれ放題だもんなぁ(遠い目)
随分と昔の話なんですが、昔の作品の方が・・・げほごほ・・・上手・・・げほっ・・・いい味出してるなぁ〜(笑)
ちなみにこの話で三蔵が左耳へ囁くってのは理由があります(某最遊記CDネタ)
関さんは大学の先輩に聞いたようですが「女の人を口説くには女の人の左耳から囁け」と言われたそうです。
何故かと言うと左耳から囁いた声は人間の右脳に響く。
右脳は人間の情緒を司る脳なので、より強く愛の言葉や想いが心に響く。
という理由からだそうです。